壺中天

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【2018】ネパール旅行記2 ボダナートの夜


ネパールと聞いて思い浮かぶものといえば、ヒマラヤやイエティ、そしてこういう「目」のついたストゥーパ(仏塔)という人が多いのではと思う。

ネパールのシンボルともいうべきこの巨大なストゥーパを擁するのが、カトマンズ市の北西にある仏教聖地、ボダナートである。

今回の旅では、まずこのボダナートに一泊することになっていた。

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12月26日(2) ボダナート

聖地に入場

ボダナートの聖地は市街地と隔てられており、中に入るにはチケットを買う必要がある。
こちらが入り口の門。電線がパワフルですね。

付近には観光客のためのATMや両替屋も多く、ガイドさんに両替を手伝っていただいた。

ネパールでは米ドルも使用できるが、
どの程度のお店まで使えるのかわからないし、
渡米よりネパール再訪の可能性の方が圧倒的に高いし、
そもそも米ドルなんぞ持ってたところで面白くもないのでルピー(以下Rs)に両替した

レートは1Rs1円換算でとても簡単。3万円が29400Rsになった。ネパールの最高額紙幣は1000Rs札なので、財布は1000Rs札でギッチギチに。

門を入るとチケット売り場のブースがあり、そこで400Rsを支払う。ちなみにネパール人は入場無料、SAARC(南アジア地域協力連合)加盟国民が150Rs、その他の観光客が400Rsとなっている。

ストゥーパの周囲は巡礼路になっていて、周りにはレストラン、仏具屋、CD屋、おみやげ物屋、チベット工芸の店など観光客向けのあらゆるお店が並んでいる。

仏教の習慣で神聖なものは右回り(右繞、チベット語でコルラ)するため、順路は時計回り。ホテルまでは左回りが近いけど、あえて右回りで行くというのが面白い。

ホテルはこちらのHappiness Guesthouse(黄色い建物)。
ご覧の通り小さなホテルで、1階にはお店が入っているためロビーはなく、フロントは階段わきに小さなブースがあるだけの簡素なものだった。

客室はわずか4室で、1フロアがそれぞれ1つの客室になっている。自分の部屋は最上階の050。そこまでは延々と階段を登っていった。

最上階の部屋は、見晴らし抜群のテラス付き!

重たいスーツケースをひきずって階段を上がった苦労も一気にぶっとんだ。ストゥーパを上から撮るべくロケハンをする予定だったが、その手間も省けてよかった。

(ちなみにストゥーパ表面のツブツブは鳩。神聖な動物らしくボダナートには大量の鳩がいるが遠目にはちょっとキモイ)

部屋の内部はこちら。

シンプルな部屋だが設備は一通りそろっている。エアコンがないのが冬場はつらいが、毛布や湯沸かし器があるのでなんとか凌げる。少々繋がりにくいが、Wi-fiも利用可能。

チェックインを済ませ、ガイドさんとは一旦お別れ。とはいえ明日カトマンズのホテルまで送ってもらうので、明日の午後までの短いお別れだ。荷物整理を済ませてから、さっそく散策に出発する。

ボダナートのストゥーパについて

そもそもストゥーパとは何かというと、仏舎利ブッダの遺骨)を納める建物で、日本のお寺で言うと仏塔にあたる(漢訳語は「卒塔婆」)。

いわゆる「塔」の姿を取るようになったのは中国においてで、原産国(?)のインドに近いネパールやチベットでは丸っこい形をしている。

伝説によると、ボダナートのストゥーパにはシャカの前のブッダであるカシャパ・ブッダ迦葉仏)の舎利が納められているそうだが、ストゥーパ自体の起源ははっきりせず、とても古いものだという以上のことは解らないそうだ。

今のボダナートは特にチベット仏教の聖地としての役割が大きく、チベット本土からの亡命者が沢山住んでいる関係で、一帯にはチベット仏教の寺院や僧院も多い。

そのため、ヒンドゥー教色の強いネパールの中でも、ボダナート周辺はチベット文化を濃厚に感じられる、異国の中の異国のような場所なのだ。

チベット文化に触れてみたいけど本土には行きにくい……という人にもお勧めだ。

ストゥーパの周りはいつも観光客や巡礼者でにぎわっている。
やはりチベット人らしき人々が多く、赤い衣の僧侶たちや縞模様のスカート(パンデンというチベット民族衣装)をまとった女性たちがマニ車や数珠を手に歩いていた。

チベット仏教圏では、寺院など聖地の壁にはマニ車が取り付けられていることが多い。(マニ車:経典が入っていて、一周回すと一回お経を読んだことになる

聖なるものを一周すると功徳が積める。さらにそこにマニ車コンボで効果を上乗せできるのである。

意外と重い&腕を上げてキープするので、一周すれば結構腕が鍛えられるのでは。ここのマニ車は、格子が嵌まっている所もあって少し回しづらかった。

ストゥーパの入り口は北側にある。
正面にあるお堂はハリティ女神(鬼子母神)を祀るアジマ寺院。入り口はアジマ寺院の左右に二つあり、コルラの習慣に従って、向かって左から入り右から抜ける決まりになっている。

マンダラを模したストゥーパの土台は三段あるが、観光客が歩けるのは一番下だけだ。 塔の頂上から釣り下がる旗はタルチョといい、願いを込めて掛けるもの。日本で言うと、神社の絵馬のようなものだろうか。…そういえば、タルチョにも風の馬(ルンタ)という別名があるな。何か共通のイメージがあるんだろうか。

風がある日だったので、バタバタとタルチョのはためく音が聞こえていた。この風を通じて、願いが天に運ばれるのだ。

タルチョは定期的に架け替えているようで、その作業現場も見ることができた。梯子を立てかけていたが、まさか頂上まで登るのだろうか。

あっ、よく見たらちゃんと鎖がある…でもやっぱり命がけだな!!

なおタルチョは観光客でも奉納できるらしく、係員さんに声をかけられた。面白そうだったが、今回は遠慮してしまった。

巡礼路でお買い物

上述した通りストゥーパ周辺にはたくさんのお店があり、買い物も楽しめる。

代表的な土産物はタンカ(仏画)、シンギングボウル(澄んだ音が出る金属製の鉢)、金属工芸品(サンゴ、トルコ石など貴石を使ったアクセサリーや小物が綺麗)など。

その他仏像やマニ車など、聖地だけあって、商品はやはり仏教にまつわるものが多い。 チベットに行った時に買い損ねたものがいろいろあったので、お店を見て回ってみた。

まず探したのはマニ車

それもただのマニ車ではなく、乾電池やソーラー電池で動く電動マニ車だ。チベット仏教圏ではマニ車を回すためあらゆる動力源が利用され、人力のほか火力、水力、風力で動くマニ車もある。そして現代、電化の波は仏具界にもしっかり及んでいるのだ。

電動マニ車自体はチベットで買ったものを1つ持っているのだが、実はこれも形のバリエーションがとても多く、もう一つ欲しかったのだ。

選んだのはこちらのマニ車。クリア素材を使うというアイデアにやられた。
お値段は1500Rsチベットで買ったのは70元だったので、こちらの方が少々割高だ。 

下段にソーラーパネルがついているが、日光に直に当てないと動かないため今は家で沈黙している。裏側には電池ホルダーがついており、単4電池を入れれば室内でも動かせる。

その他、チベット風のペンダントヘッド(1000Rs)を2つ購入した。日本の通販サイトで買うと2~3000円くらいするので大分お得だが、上手く値切ればもっと安くなったのかも。

帰国後、DIYでアクセサリーにしました!

夕暮れのストゥーパ

16:30頃、日が傾いてきたのでホテルに戻り、ホテルのテラスで日記を書きながら日没を眺めた。

この頃になると気温はどんどん下がり、上着どころか帽子や手袋がないとつらいほどになってきた。

夕方は巡礼者が集まる時間帯のため、あちこちのお寺から勤行の音が聞こえ、巡礼路ではサン(木のお香)が焚かれ、白い煙をあげていた。

そして儀式に使っているのか、チベット香の独特な匂いが漂ってくる。五感で味わうボダナート、という感じだ。

特等席にいるのをいいことに、ここから先はひたすらストゥーパの写真を撮り続けた。幸い、この日は夕日のコンディションも最高だった。

壇上に登り、祈りをささげる人々。17:00を回ると入場は締め切られ、ストゥーパに上る人もいなくなった。

夜の巡礼路と夕食

日が沈むのを見届けて、夕食に繰り出した。もう外は暗いが、参拝者はとても多かった。寺院ではプージャ(礼拝)が行われており、祭りのような賑やかさ。

座り込んで読経する僧の姿もあり、夜のボダナートはすっかり観光地から濃密な宗教空間に変わっていた。

牛肉と水牛肉

夕食はホテル近くのチベット料理屋「チベタンキッチン」でいただいた。

「フライドポテトwithマッシュルーム」と「モモ(チベット餃子)」の5ピースを頼んだのだが、実際来たのはこちら。

……モモ?ってこれ、肉まんじゃないすか……。

さすがに肉まん5個も平らげるガッツはないんだけど…。MOTTAINAI精神で4つ目まではなんとか行けたけど、結局ギブアップ。

フライドポテトもフライドライス的なフライドで想定とは違っていたが、結果的には重くなくてよかったかもしれない。飲み物はもちろんバター茶。お茶が濃くておいしかった。

ちなみにヒンドゥー・仏教圏らしく、肉料理は中身が選べるようになっている。種類はチキン・ビーフベジタリアン

ヒンドゥー教国なのに牛肉?と思ったら、表記はBeefではなくBuff、つまり水牛肉。いわゆるシヴァの聖牛以外の牛なら食べてもよいそうだ。なるほどなー。

夜も賑やかなストゥーパ界隈。

裏路地探検

巡礼路を外れて横道に入ると、八百屋や洋服屋、日用雑貨店などローカルなお店が集まる空間がある。

観光客でにぎわうストゥーパ周りとは打って変わって落ち着いた雰囲気のエリアで、地元のご家族やご近所さんが集まって談笑したり遊んだり、憩いの時を過ごしていた。

そんな団欒の場を部外者丸出しでうろついていると、いきなり光の洪水が現れた。

何かと思ってみてみると、バターランプの奉納台だった。チベット仏教では、神仏への供物としてバターランプを奉納する習慣があるのだ(チベットは植物資源に乏しいので動物性の油を使う)。

見ていると次々人が集まって来て、どんどんランプに火をつけていく。会話を聞いていると中国語だったが、華人なのか、チベットから来た人なのか?

チケットカウンターが写っているけどこの時間には閉まっていた。中国の古鎮もそうだけど、もしかして夜ならフリーパスで入れるんだろうか。

聖地の夜らしい、神秘的な光景だった。これはまた見に行きたいな。

ホテルに戻り、テラスで一休み。沸かしたお湯を飲みながら、飽きもせずにストゥーパを眺める。

真っ暗な空に映えるストゥーパの白がいいですね。圧倒的な存在感!

実はまだ一日目。この日はとにかく長い日だった。絶景のお膝元で寝起きする幸福に浸りつつ就寝。

つづく
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