壺中天

歴史、旅行、ごはん、ゲームなどアジアなことを色々つづります。

【2018】中国シルクロード紀行2 虹の山脈と夜行列車

前回:中国シルクロード1:中原から西域へ
次回:中国シルクロード3:熱湯砂丘クライマー
3日目 2018/08/09 張掖
丹霞地質公園→張掖市内観光→敦煌行き夜行列車

星空タイムトリップ

早起きしなきゃという緊張のせいか寝つきが悪かったのか、4:00くらいには目が覚めてしまった。しかたないのでそのまま起きて準備をする。

洗顔のため外に出た。

周りは静かで、岩山のライトアップも消えている。暗いけど闇ではなかった。文字通り満天の星が頭上にあった。

それが本当の姿なのに、見慣れぬそれはひどく圧迫感のあるものに感じた。星ってこんなに存在感のあるものだったのか。

古代の西域を行き来した旅人も、こんな夜空を見ていたんだろうか。空だけじゃなくて、薄闇で物の姿形が曖昧な今、彼らと自分の体験にはほとんど違いがないんじゃないか。なんてすごいことなんだろうと思った。

準備をして時間が余ったので星空の撮影に挑戦。出来るだけ光を取り込まなきゃいけないのでシャッタースピードは30秒。 ピントが合わないのでMFでシャッターを切る。カメラやってるとアストロレーサーが…とかごにょごにょ余計なことを思うけど、記念だからそれっぽく写ればそれでよし!

このホテルの良さは色々あるけど、この星空だけでも十分に元が取れると思った。

朝いちの丹霞地質公園

機材を片付け、5:00にはテントを出た。他のお客さんはあまりまだ活動していない。こんなところに泊まるくらいだし、朝いち組が多いと思っていたので意外。いびきが聞こえてきたり、トイレに行く人が見えたりするだけ。フロントも閉まっている。暗い道を、公園入口に向かって一人進んでいく。

チケット売り場にはすでに何人か人が来ていた。5:20に到着した時は5~6人、そこからだんだん増えてきて、売り場が開いた時には30人くらいになっていた。

窓口は2つあり、左側の3番目くらいに並んでたんだけど時間になって開いたのは右の方だけ。もう一方に並んでいた人たちは当然並びなおし。よくあることだけど、うーん理不尽……。

でも利害に敏感で自己主張激しそうな中国人民も、文句言わないのは意外だった。定員があるわけでもないし、鷹揚に構えてればいいのかな。よくも悪くも順番にこだわるのが日本人の性分で、良くも悪くもこだわらないのが中国人なんだろう。

結局チケットを手にしたのは45分頃。値段は74元(当時は1500円くらい)。ゲートをくぐるとすぐにバスが待ち構えていた。地質公園内にはいくつか展望台があり、その間はエコバスで移動することになっている。早速乗り込み、目指す「七彩虹霞台」の展望台へ。

前回の記事で地図を載せたけど、丹霞地質公園には展望台が幾つかある。そのうち主なものが
(1)七彩雲海台
(2)七彩錦繍
(3)七彩虹霞台
(4)七彩仙縁台

で、バスのルートは入り口から入って雲海台から反時計回り(地図左の楕円形部分)。

まだ暗い岩山の間をバスが走る。薄闇の中でまどろむ岩山の色合いはまだはっきりしないが、東の空はもう青白くなりつつあった。

朝日を見るなら七彩虹霞台がよいと事前に調べていたので皆そこまで行くのかと思っていたら、意外なことに、大勢いた乗客のほとんどは最初の展望台・雲海台で下車。虹霞台まで乗っていったのは私を含めて5~6人ほどだった。

バスを降りると、オレンジ色の光が見えた。日が昇り始めている。展望台までは階段を上らなくてはいけない。足早に展望台を目指したが、体力がないからすぐに息が切れてしまう。夏といえども乾燥地帯で寒暖差がある。外は肌寒く、上着を着てきてよかった。

登り切った所から尾根伝いに木道を進み、階段を降りると広い展望台になっていた。東の方角を見ると、岩山の向こうで太陽が生まれようとしていた。

燃えるような鮮やかなオレンジ色。雲とのコントラストも劇的で、こんな強烈な朝焼けは初めて見たかもしれない。

光は次第に広がって、雲を赤く色づかせていく。肝心の岩山は、まだ光が当たらず眠りについているようだった。

朝日のスペクタクル

朝焼けの色が空一面に広がって、少しずつ夜が明けていく。

しかし雲が多いので、日が昇っても岩山は日陰のまま。

それでも展望台でしばらく様子を見ていたら、なんと一瞬だけ、雲の切れ間から光が差した。

うわー!?
なにこれすごい!もうすごいとしか言えない、完全に言語でカバーできる領分を超えてて、何言っても白々しくなってしまうやつ!!

ところで、丹霞地形の「霞」とは実は中国語では朝や夕暮れの太陽光を指すのです。だから丹=赤と霞が結びつくのはごく自然なこと。

仙人は霞を食べるというけど、それも幽玄な山谷を漂う「かすみ」ではなく、本来は太陽のエネルギーを指しているそうだ。

丹霞は日の出と日の入りが一番美しいというのも当然。天地の「霞」の共演、そこから感じる圧倒的な美とエネルギーにただただ圧倒されるばかり。

それよりも何が良かったかって、これだけすごいものが見られるのに、あまり人が多くないんですよ。展望台がぎゅうぎゅうになっててもおかしくないしそれを覚悟してきたのに。

しかし、こんな摩訶不思議な景観がどうやって作られるのか。理屈的には、堆積した赤い砂岩が風化・風雨の浸食を受けることで形成されたということらしい…いや、わからんよ!知りたいのは何でこんな色に、こんな斜めの層状になるのかってことだよ!

結局、鉱石の成分、地層の重なり具合、外的要因などいろんな要素が奇跡的にかみ合って作られた景観で、理屈は知らん、現に存在するんだから仕方がないっていう神の領域に属するモノなんじゃないかと思う。

だからもう、何も考えずとにかく目の前にあるものを楽しめばそれでいいんだろうと思った。

すっかり日が昇り、朝日のスペクタクルは終わってしまった。木道を降り、展望台周辺の見どころを見て回った。ちなみに展望台の辺りはこんな感じ。四阿のある辺りからは虹の山を近くで見られます。

丹霞の展望台めぐり

その後は西門方面行のバスに乗り、ほかの展望台へ。

七彩仙縁台

ここでは岩山の尾根に沿って展望通路が作られていて、「睡美人」や「七彩屏」などの見どころがある。通路を向かって左に歩いて往復する形になるけど、左側(道路の対岸)には虹色の山、右側には普通の岩山が見える。

歩きやすく整備されているけど、アップダウンが激しいので体力のない私は息も絶え絶え。そして物凄い風!周りの人たちのストールやスカートがバタバタと風にあおられていた。というか、こんなとこスカートで来るかー!?

地質公園内はどこでも虹色の山というわけではなく、むしろそうでない所の方が多い。岩山の表面はガサガサして凹凸が多く、厳しい乾燥や風雨の浸食の跡を感じる。

地味ではあるけど、厳しい環境で生き抜く大地の生命力みたいなものを感じてこれはこれで好き。

道路を挟んで向かいには仙縁台の見どころ「七彩屏」がある。

丹霞らしい虹色の山なんだけど…これは惜しい!午前中だと逆光になってしまって本来の色合いが見えない。ここは午後に行った方がいいな。

通路を行って帰って、駐車場に戻ってきた。仙縁台のもう一つの見どころ「睡美人」は駐車場から見ることができる(3つ前の写真にも中央に写ってます)。

あおむけに横たわっている女性のように見える岩山。うん、これは分かりやすい。麓ではラクダがのんびり草を食んでいた。

七彩雲海台


次の停車場は七彩雲海台。ここもまた昇り道がきつい!駐車場から坂道を上り、そこからまた上の展望台まで階段が伸びている。

苦労した甲斐はあり、展望台からの眺めは素晴らしい。でもここもまた午前中は逆光で、山の色合いは全然見えない。かろうじてレタッチで明るくしてみたけど、だめだこりゃ。ここも順光だったらすごいだろうなぁ。

全体的に、色の層が刷毛で塗ったみたいに綺麗~に揃ってるのが特徴。
特に東側にある「七彩飛霞」(↓)は大迫力。山というより入り組んだ渓谷のようになっていて、岩山の合間に走る道路との組み合わせも絵になる。

時間がたって、ちょっとだけ順光気味になった時に撮ったもの。この木の根っことかスカートの襞みたいな形も不思議だと思う。

虹色の山以外も、この辺りの景色は見ごたえがある。

ごつごつした岩山の中に、丸みを帯びた岩山も混ざっている(↓)、これも雲海台周辺に多い地形。波が打ち寄せているような、蛇がうねっているような。

この七彩雲海台は展望台も高い位置にあってひと際見晴らしがよく、虹の山もそれ以外の地形も存分に楽しめ、丹霞地質公園のハイライトと言えるところだと思う。

ただし散々書いたように、ここで虹の山を見るなら、午前中は逆光になってしまうので不向き。夜明け前に雲海台で降りていった人が多かったけど、彼らは何を見ていたんだろう、本当に謎。

このころからツアー客が増え、日が高くなるとともに気温が上がってくる。日差しもだんだん強くなり、肌が焼けるようにチリチリする。しかも人が増え、バスに乗るにも並ぶようになった。

こんな気候の中での待ち時間だから辛い。気温的にも混み具合から言っても、早朝から入ったのは正解だった。

七彩錦繍

次に訪れた錦繍台は一方通行。降車口から乗車口まで700mくらいの遊歩道を歩く。日差しが強く傘をさしている人が多かった。

ここは色というより、地形自体を楽しむ所という印象。それでも、鮮やかな赤茶色の山が多くてそれが綺麗だった。長い遊歩道は仙縁台と違って起伏がないので歩きやすく、眺めも風も気持ちいい。

丹霞地質公園の主要な見どころは、以上4つの展望台。一通り堪能したし、見慣れて来ちゃったので公園を離れることにした。

門を出たのは11時頃。まだ正午前だが、朝5:30に入ったので滞在時間は結構長い。順光でもう一度見直すにしても結構疲れていたし、それは次の機会に譲ります。

丹霞地質公園簡易ガイド

行ってみたい方のために、情報を整理しておきます。

行き方

張掖までは国内線でアクセス可能。北京or上海→西安→張掖。

移動(タクシー) 所要時間 料金
空港~丹霞地質公園 約1時間 170元くらい
市内~丹霞地質公園 約30分 90元くらい
移動(バス) 所要時間 料金
市内~丹霞地質公園 約1時間 10元くらい

※市内~丹霞のバスは1時間1本くらい。発着は張掖市内のバスターミナル。
※空港から丹霞に直通のバスはないので、市内に出てからバスを乗り換えるみたい。

料金はあくまで自分の体験で、相場は詳しくありません。目安にしてください。

入場(チケット販売)時間

期間 時間
1/1~2/29 7:30~17:00
3/1~4/10 6:30~18:00
4/11~5/4 6:00~18:00
5/5~8/31 5:30~19:00
9/1~9/30 6:30~18:00
10/1~10/7 6:30~19:00
10/8~10/31 6:30~18:00
11/1~12/31 7:30~17:00

入場料:74元

以下の日は無料で開放(バス代のみは払う)↓

春節 元宵節
3/8(婦女節) 5/18(国際博物館の日)
6月の第2土曜世界文化遺産の日) 10/20(百万人来場記念日)

見どころ


今回訪れた4つの展望台の見どころ・特徴を整理してみました。★は独断と偏見によります。番号は西門から入った場合のバスの停車順です。

雲海台 総合的に一番見ごたえがある。虹の山なら午後がおすすめ。
錦繍 虹の山は少なめ。景色を見ながらウォーキングするのが気持ちいい。
虹霞台 虹の山目当てなら個人的には一番。大規模だし割と近くまで行ける。
仙縁台 コンパクトに丹霞を堪能できる感じ。午後がおすすめ。

一番地形がきれいに見える日程は、1日目午後に①②を見る→公園付近で1泊して翌朝③で朝日を見る、なのかな。

朝イチで入って1日粘るにしても、公園内にゆっくり時間をつぶせるところがあまり見当たらなかった印象。レストランもないし。地図には休憩所のマークがあるけど、どの程度のものだったか記憶にない。

張掖市内への道

ホテルに戻りチェックアウトをする。連泊するのか、周りのテントの人たちは洗濯をしていた。フロントで市内へのバス停の路を教えてもらい、ホテルを後にした。

通いなれた丹霞西門を通り過ぎる。この辺は食堂やホテルが多い。畑もあり、これは紅花畑。

当時はフーンと思って通り過ぎたけど、最近中国の化粧品について調べていた所、張掖の紅花が歴史的にとても重要なものだと知った。

中国では、化粧品の「紅」は漢代に張騫が西域から紅花をもたらしたのが起源だそうだ。中国語で紅は「臙脂」というけどこれは当て字で、元々は匈奴語の音訳で燕支や焉支と書いた。

これは紅花の産地・焉支山に由来し、その所在地はなんと張掖。張掖の紅花は昔からの特産品だったのだ。満天の星空のように、これもまた現在といにしえをつなぐ光景だったのか…。

こちらはトウモロコシ。

そしてバス停はというと……下の写真に写っているけどお分かりだろうか。

ごくごく普通の路線バスの停留所(南台村停留所)で、すっかり予想を裏切られた。丹霞は有名観光地だし、勝手にバスターミナルがあって市内や空港に快適にアクセスできるようなイメージがあったんですよ。

だから時間も気にせず出てきてしまった。ガイドブックによれば毎時30分の到着(つまり1時間1本)で、まだ45分ある...。しかも日差しが強いし椅子もないし、時間潰せるようなところもないし長時間待つのはつらい。

今はどうなっているのか分からないけど、丹霞地質公園ってモノのすごさと観光地化の度合いが釣り合っていなくて不思議な感じだった。

空港にも丹霞行きの旅行者を狙ったタクシーやツアーガイドがいると思ったら全くだったし、なんなら空港からシャトルバス出ててもおかしくないと思っていたし。

新興観光地だからなのか、そういうスタイルなのか。まあ、商業主義全開になっちゃったらそれも悲しいので、この淡泊さでちょうどいいのかな…

丹霞の方から来た欧米人カップルがヒッチハイクしてトラックに乗っていったが、自分にはとてもできない。結局、声をかけてきたタクシーに乗ることになった。

見慣れた道を通り、タクシーは市内へ。値段は覚えてないけど100元はしなかった。


ホテルはこちらの「北辰商務酒店」。1階2階はお店になっており、フロントは3階。無事チェックイン出来たもののここもクレジットカードは使えなかった。宿はカード払いを前提にして両替してきたので、所持金が削られる…まだ3日目だというのに。

ちなみに、実はここに宿泊はしません。今日は寝台列車敦煌まで移動するので、休憩だけの利用になる。最後まで宿をとるかどうか迷ったけど、リュックで来てるとはいえ荷物は荷物。現地に来てみて昼間の暑さもきつかったので、やはり部屋を確保してよかった。

張掖市内観光

少し休憩して散策に出る。さて、今更ながら張掖という町について少し書きたい。

西のかた西安を出発し、黄河を渡る。その先には砂漠と山脈に囲まれた一筋のオアシス地帯、河西回廊が広がっている。いわば都と国境を結ぶ連絡通路で、前漢武帝はこの地を征服し、武威、張掖、酒泉、敦煌の四郡を設置した(河西四郡)。

張掖の名は「国の臂掖(うで)を張る」という意味で、西域進出への気概を込めて名付けられた。また別名の「甘州」は武威の別名・粛州とともに、甘粛省の名前の由来となっている。

張掖を潤す水は祁連山脈の雪解け水。郊外にも畑が広がっているが、市内にも柳など緑が多く、ここが砂漠の中にある街だとは全然思えない。あまり乾燥が気になる感じもなかった。

脂身たっぷり・意外とあっさり

最初の目的地は西大街の「孫記炒炮」という食堂。張掖の名物の麺料理・「炒炮」の名店だ。

シルクロードは中国への小麦伝来路でもある。その関係か、河西回廊では麺料理が発達し、名物料理になっている。思えば蘭州ラーメンもその一つなのか?

朝のビスケット以来何も食べてないし、歩き回ったのでものすごくお腹が減っていた。銀行の多い通りを進み、角に差し掛かるとお店があった。食堂は2階にある。

食券制のような仕組みになっており、まずはカウンターで注文し、番号の書かれたレシートを受取口にもっていく。番号が呼ばれたら取りに行くことになっている。

「衛生は命に係わる、泰山より重い」と中国らしいスローガンの掲げられた厨房では、調理人が熱気の中、大きな鍋で麺と具を炒めていた。出来上がると次々とお椀に盛られ、それが大きなお盆に載せて受け取り口に運ばれてくる。

しかし、1回(ひと鍋分)作るのに10分くらいかかるしお客さんも多い。注文の品が手元に来たのは30分後くらい。待ちくたびれたよ...。

さて肝心の炒炮は、短くねじり切ってゆでた麺をタレで合えたもの。具はほうれん草とセロリ、豆腐、豚肉。豚肉は脂身が多いけどプリプリ・トロトロなので脂身苦手な私でも気にせず食べられた。

いかにもヘビーそうな見た目だけど、思っていたよりあっさりした味。弾力のある麺と程よく脂の抜けたお肉が美味で、胃にもたれることもなかった。

腹ごしらえをしてから市内の見どころを見に行く。張掖の街はなかなかの都会で、歴史的な見どころはあまり多くない(だからこそ、丹霞のことを知るまであまり意識してこなかった)。

そんな張掖の代表的な見どころを2点ご紹介したい。

鎮遠

古代には漏刻で時間を計り、鐘と太鼓で時刻を知らせていた。西安にも有名な鐘楼・鼓楼があるが、河西回廊のオアシス都市にも同じように鐘楼が造られている。

張掖のシンボル、鎮遠楼は甘粛省最大の鐘楼西安の鐘楼と同じく、今はロータリーの中心にある。創建は明代、現在の建物は清の康煕年間に再建されたもの。中には唐代の鐘があるが、入場はできない。

大仏寺

1100年頃、西夏の治下で建立された。名前の通り大きな涅槃仏で有名で、フビライ・ハンの生誕地、はたまた南宋最後の皇帝が出家して身を隠したという、極端に対照的な伝説のあるお寺だ。

張掖の町の大通りを歩くと大仏寺の巨大なストゥーパが見えるが、寺の入り口は大通り沿いではなく裏手に回った小径にある。

寺の周囲は華北風の古風な建物が取り巻いており、背の高い柳並木が両側に植えられ見ているだけで涼しい。骨董のお店が多かったり、赤い塀の前で中国将棋を指すおじいさん方がいたり、とても風情のある一角。

名物なのか、超市の店頭では瓶入りのヨーグルトドリンクを売っているのをよく見かける。暑い日には手が伸びそうになるけど、ちょっと怖いなぁ…。

窓口でチケットを買い中に入る。中国らしい華やかな寺院装飾は見ごたえ十分。
正面には本堂があり、ストゥーパはこの真裏。中には土製の涅槃仏が鎮座している。これが寺院名の「大仏」で、全長は35m。中は薄暗く神秘的だ。

境内には奥行きがあり、このほかにも経典や仏教美術の展示館、山西会館などがある。木陰が多く休憩するにもいい場所で、風が吹くと建物の軒先につるされた鐘がなり、リンリンと涼やかな音を立てていた。

山西会館は、山西省出身の商人が作った同業組合の施設。山西商人は明清代に中国全土の流通を担った大商人グループ。この辺りでも商売が盛んだったようだ。

立派な牌楼と、奥には舞台がある。会館には大体舞台が作られる。一緒に演劇を見ることで共同体の絆を深めるというやつだ。

そして、絆を深めるためにもう一つ作られるのが寺院。山西会館には商売の神で、山西の偉人でもある関羽が祀られている。左右にはほかの五虎将軍が控えているが、こう見ると馬超っていまいち見た目の特徴がないな。よく見る獅子兜かぶってないと消去法でしかわからん...。

さて、
まだ時間はあるけど、早朝から歩き通しで足が痛かったので明清街・欧式街はあきらめてホテルに戻った。

というか、この時いつものように『地球の歩き方』を持参していたんですが、張掖市内地図の縮尺が明らかにおかしくて。具体的には、1kmはある所を100mとしか書いてない。だから随分狭い街だと思ってあれもこれもと予定を立てたら実際はまったくそうではなく、予定してた見所をまったく回りきれなかった。

途中でお金をおろし(カードが使えないので出費が思ったよりかさんでいた)、ホテルの1階に入っていたスーパーで水と、冷えた飲み物はなかったので桃のアイスを買って部屋に戻る。かなり気温も高かったので、体を冷やしたかった。

夜の鎮遠

夜景好きとしては、鎮遠楼の夜景が撮りたい。というか、鎮遠楼に近いここのホテルに宿を取ったのも最初からそのためだった。日没は20:30頃なので、それまで休憩しつつ荷物整理等をしていた。

19:00くらいかな?突如ノリノリな音楽(ジンギスカン)が聞こえてきた。なんだなんだ?とホテルの窓から見てみると、ホテル対面の病院前で踊る集団がいた。
これは…広場舞なのか?面白いので書き留めておく。

20:30。部屋を出ると、エレベーターを上り下りする客も増えて館内は賑やか。外に出る。夜はまだ始まったばかりなので町には人が多い。これから食事をしたり遊んだりするんだろう。おかげでこちらも安心して出歩ける。

美しき夜の鎮遠楼!建築フェチとしては、ロータリーにあって入場不可なので人が写り込まないのが嬉しい。

この辺りはネオンサインも華やかで、上空には電飾付きの凧も飛んでいた(上空真ん中あたりの白い線)。中国人は凧が好きで、上海の外灘とかでもよく見かける。大分糸が長いと思うんだけど、どこで飛ばしているのだろうか。

敦煌行き夜行列車

汗血馬と鉄道駅

21:00頃にはホテルに戻った。
敦煌行き列車の出発は24:27。まだ時間はあるが、何かあったら怖いので念には念を入れて21:30にはホテルを出る。フロントでチェックアウトを申し出ると「明日でしょ?」と言われたが事情を説明してOKをもらった。チェックアウトを済ませ、駅へと移動を開始した。

タクシーを探したが、昼に比べて「空車」の割合は減っている。なんとか鐘鼓楼付近で一台捕まえることができた。行き先を告げ、何時の電車?と聞かれて答えると敦煌か、と言われた。慣れっこか。

途中で同じく駅に向かう男性を拾い、相乗りする。街の東には有名な飛燕を踏む汗血馬のモニュメント。その辺りが市街地と郊外の境界線といった感じで、急に周りが暗くなった。やがて突き当りに駅の建物が見えてきた。

料金は各自会計。大連へ行くという相乗りのお兄さんと共に駅の入口へ(大連って!めちゃめちゃ遠くないか)。しかし構内に入る前に、まずは予約した寝台列車のチケットを取りにいかねばならない。

チケットは事前にTrip.comで予約していた。窓口は一つだけ開いていて、2~3人が並んでいるだけ。チケットを予約していると言って番号を見せると、すぐに発行してもらえた。よかったよかった。

スムーズに行ったので、列車が出るまでまだ1時間半くらいある。軽く夕食をとれないかと思ったけど駅構内に食堂はない。売店にも夜食になりそうなものはない。ホテルの下にスーパーがあったし、何か買って来ればよかった。

時間も遅いしここは我慢して待つことに。列車は到着が少し遅れている。眠いのをこらえて待ち続け、ようやく検票が始まった。

初めての寝台車

ホームに出た。停車中の列車内は暗く、自分の席を探し当てるのも一苦労しそう。乗車券に記載された私の寝台は3号車の3号寝台中段。

進行方向から辺りを付けて車両に乗り込んだ。細長い寝台が並んでいて、上中下の三段になっている。通路側に梯子があり、中段・上段にはそこから上れる。無事3号寝台を見つけ、荷物を押し上げ梯子を上った時だった。

男性に呼び止められ、自分が3号中段だからチケットを見せてと言われた。

えっ!?周りもざわついてちょっとしたギャラリーができる。ヒヤっとするが、私の乗車券は確かに3号車3号寝台中段。すると男性が手に持ったチケットを後ろから覗き込んだ人が言った。
「あんたは2号だよ!」

な、なんだよもー!寄る辺ない旅行者を不安にさせないでくれよう…。

一波乱あったけど、晴れて自分の寝台に落ち着いた。足元(通路側)にリュックを置き、カメラやバッグは壁際に置く。これがあるから今回はスーツケースではなくリュックで来たけど正解だった。乗り込みがひと段落着いた辺りで、車両に車掌さんがやってきた。走行中は乗車券を預ける仕組みになっているのだ。

少し揺れるが、ベッドは割と寝心地が良い。チビの私はサイズ的にも余裕があったが、背の高い人は体を折り曲げないと収まらないかも。手すりはあるけどスカスカなので、サイズが小さい者にはそれだけがちょっと怖い。

(翌朝の写真)

防犯面で少し心配していたけど、みんな寝るだけって感じだし狭い分荷物を抱え込んでるし大丈夫だろう。

とにかく眠いので、床に就くや否やすぐ就寝。ゴトンゴトンという、列車の振動が子守唄のように心地よく、やがて遠くなっていった。

目覚めたら次の目的地、敦煌だ。
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