壺中天

歴史、旅行、ごはん、ゲームなどアジアなことを色々つづります。

マカオの美味しいものガイド

友人と旅の話をして、マカオって何が美味しいの?何がおすすめ?とよく聞かれるのでまとめておく。

大航海時代の拠点であったマカオには西洋・中国・南洋世界が入り乱れた多彩な食文化がはぐくまれてきた。かつ、いい意味で近代的でないマカオでは庶民的なローカルフードも多彩にある。

ただ、中華圏のローカルフードが次々と日本で身近に食べられるようになった昨今においても、マカオの食べ物はなかなか食べる機会がない。

だからそのためだけに現地に行くこともしばしばだし、知名度もあまり高くないために冒頭のような問いをよく投げかけられるのである。

自分が食べておいしかったものを中心に、お店や食べ物について少し書きたいと思います。基本はB級グルメ。

澳門のパンと餅屋

マカオに行ってよく利用するのがパン屋さん。ヨーロッパならともかく、アジアを旅してパン屋に行く…という選択肢は基本的にないんだけど、マカオでは別。むしろ朝はパン屋で食べることが多い

見出しの「餅店」は「パン屋」。餅はもちではなくてパンやクッキーなど小麦粉製品全般のこと。焼餅(シャオピン)とかの餅。

歴史的に西洋文化に親しんでいるマカオの街中にはパン屋さんがとても多い。昔ながらの老舗パン屋から、現代的なチェーン店までタイプも色々。値段はお店やものによるけど大体~15パタカ(300円程度。以下パタカ=P)くらいまで。特に前者は珈琲店(カフェ)も兼ねていることがあり、店頭でパンを販売しているだけでなく、パンを含めた食事もとれる。

定番パン①:パイナップルパン(菠蘿包)

これは、マカオ発祥ではなく香港のパン。香港とは近いのでマカオでもよく食べられているし、私にとってマカオを訪れる楽しみの1つでもある。

パイナップルと銘打っているが、要はメロンパンの亜種だと思ってもらえばよくて、クッキー生地がついたパン。バター風味の強いメロンパンと違って、卵ボーロのような素朴な味。パイナップルパンと言えばここ!と言う店は思い浮かばず、後述の茶餐廰をはじめどこにでもある。

ちなみにこれは、パイナップルパンに薄く切ったバターを挟んだ「菠蘿油」というスタイルで香港マカオの朝食の定番。やわらかパンとカリカリのクッキー生地に、とろけたバターが絡む至福の食べ物。特有の濃~いミルクティーとセットにすると最高の朝食。

チェーンのベーカリー、マキシム(美心)のパイナップルパン(と、ポークチョップバーガー)。定番のパンなので、町のパン屋さんでも大体売っている。こういう店だと、パンに具が入っているなどアレンジされたものも。

…そういえば、横浜中華街で広東系のお店を中心に「チャーシューメロンパン」と銘打ってチャーシュー入りパイナップルパンを売り出していたな。普通のを売ってほしいんだけどなぁ。

ちなみにパイナップルパンは横浜に行かなくても、最近ちらほら見かけるようになった香港茶餐廰で食べることができる。飯田橋の賛記などテイクアウトできるお店もある。

定番パン②:ポークチョップバーガー(豬扒包)

これを食べにマカオに行っていると言っても過言ではないご当地名物の一つ。マカオの美味しい物って何?と聞かれたら真っ先にこれを挙げる!

素揚げしてタレに絡めたポークチョップをパンにはさんだもので、パンも「豬仔包(※)」というマカオ独自のもの。値段は大体25P(500円)前後。ただしセナド広場など有名観光地に近いと割高になるので注意。最近の旅ではサンパウロ天主堂跡付近で40Pで売っているのを見かけた。

※)マカオでは食パンよりもポピュラーな主食パン。見た目はフランスパンのように見えるが柔らかめ。

これ、マカオに行くと毎日のように食べているんだけどパイナップルパンと違って生粋のマカオ料理で香港茶餐廰にもないから、今のところ(知っている限りでは)日本じゃ食べられない。作ろうと思っても、ポークチョップ自体普通のスーパーにないしパンからしマカオ独自のものだし。

以下、パンの種類や肉の調理法など、お店ごとに個性が色々違うので食べたものを載せてみる。

【檀香山 ※カフェチェーン店】

一番オーソドックスなタイプ。ここのお肉は骨付きで豪快(骨の有無もお店による)。

【西灣安記 ※茶餐廰チェーン店】

衣がついてるやや変化球。また、先ほど写真を載せたマキシムのように今風のチェーン店だと、日本のパン屋やスーパーのフライドチキンサンドのように衣付き+レタスやマヨネーズが一緒に挟まっていることもある。

【南屏雅叙 ※茶餐廰】

老舗茶餐廰のポークチョップバーガーは独特。パンはよく見る「豬仔包」ではなくロールパン、お肉は薄切りでうっすら衣がついており、甘くて柔らかいパンにじんわりバターが染みて、これはこれで美味しい。…けどポークチョップバーガーを食べてる感じはしなかった。

豪快に肉がはみ出てこそポークチョップバーガー!と思うけど、歴史の長いこのお店はシニア層の利用が多いので、これくらい小作りな方がいいのかも。

要は、ポークチョップがパンに挟まっていればポークチョップバーガーとして成立するようだ。細かいことは考えずいろいろ楽しんでみたい。

定番パン③:エッグタルト(蛋撻)

マカオと言えば、と思い浮かべる方も多いのがエッグタルト。もともとポルトガルのお菓子で、ポルトガル語ではパスティシュ・デ・ナタと言う。

ちなみに広東点心としてのエッグタルトもあり、現地では呼び方や価格帯も違ってはっきり区別されている。

左:ポルトガル 葡撻(「ポルトガルのタルト」と言う意味) 10P前後
右:広東式 蛋撻(シンプルに「エッグタルト」の意) 5P前後

ポルトガル式は濃厚なクリーム部分には焼き目がついて香ばしく、パイ生地のかすかな塩気がアクセント。特別な機会に食べるお菓子、という感じ。広東式はタルト生地でプリン感・たまご感が強くあっさりした口当たり。日常的に食べるパンのひとつ、という感じ。

観光客が目当てにしているのは往々にして前者だが、ローカルなベーカリーやカフェのタルトは後者の方が多いので、頼んだ後に思っていたのと違った…とならないように注意。「葡撻」の名を探せば間違いないと思う。

「葡撻」は本土のマーガレット・カフェエ・ナタ、コロアネのロードストウズ・ベーカリー(※)などの有名店のほか、観光地周辺では必ずと言っていいほど見かけ、お土産屋として有名な鉅記餅屋の店頭販売や、店によっては町のベーカリーでも買うことができる(2タイプ取り揃えている所もある)。

ロードストウズ・ベーカリーのポルトガル式エッグタルト(11P)

滄州珈琲小食の広東式エッグタルト。ここのタルト生地はホロホロと柔らかく、卵ボーロのような味だった。(4P)

※)ロードストウズ・ベーカリーはコタイのヴェネツィアン内に支店がある。コロアネまではちょっと遠いので時間がない人はそこでも食べられる。…ただ、これは2017年の話なので今はどうか分からない。

ポルトガル式を色々食べ比べてみた結果、どこで食べてもそんなに大きな違いはない……というのが結論。

というか、ポルトガル式エッグタルトは最近業務スーパーでも買えるので、わざわざマカオまで来て食べなくても…という感じは正直ある。それならマカオ(香港)ならではのパイナップルパンやポークチョップバーガー、その他ご当地パン、後述の金銭餅などに胃袋の余力を回した方がいい経験が出来るんじゃないかなぁと思っている。個人的には。

その他好きなパン

あとよく買うのがチャーシューパン(叉焼包)。チャーシューまんの外側がパンになったものだと思って貰えばいいと思う。なにせ広東はチャーシューの本場でもある。甘辛い具が柔らかいパンに絡んでとても美味しい。

……というか身もふたもないことを言えば、マカオのパンは何食べても大体美味しい。パン屋が沢山あるということは競争も激しいので、パン食の長い歴史と適者生存の賜物と言えるだろう。

パン屋:金馬輪珈琲餅店


セナド広場の近くにあるお気に入りのパン屋さん兼カフェ。カフェとはいっても軽食レベルではなくしっかり食事がとれ、メニューもかなり充実している。(メニューも分厚い!)

店内に貼ってあったおすすめメニュー。広東料理から洋食までバリエーション豊か。洋食メニューは直訳するとチーズ入りミートスパゲッティと、ホワイトソースとチーズの魚ドリア/スパゲッティ?なんとなく味の想像はつくけどなんとも豪快な見た目、実物を見てみたい。(ポークチョップバーガーも肉があふれてるし、全体的に豪快さが売りな感じがある)

そして、以前の記事にも書いた「椒鹽骨炒麺」!とにかくこれが大好きで、これを食べるために海を渡ってると言っても過言ではない!

排骨焼きそば自体は香港マカオ界隈じゃ珍しくないんだけど、これは他のお店のと何が違うかと言うと…ボリューム感、しっかりした味付け、あとはガツンとしたお肉とたっぷりのフライドガーリック!

ちなみに2024年時点での値段は65P(約1300円)。それなりのお値段はします。なので、一人旅だとこれだけでお腹がいっぱいになってしまって色々試せないのが難点。

海を渡ってでも食べたいって、すごいこと!

しかしこれが2014年の同じ料理なんだけど…肉、減ってない?世知辛い。

お店の中は色んな意味で昔ながら。そっけない木の椅子と石のテーブル、タイル張りの壁と階段(マカオではよくある)、さらに元気なおばちゃんたちが切り盛りしていて(これもマカオでは…中華圏では?よくある)、厨房側のテーブルでおしゃべりしながらニンジンを切っていたりする。本当に昔ながらで、こういう空気の中に身を浸すのがマカオの楽しみであり至福の時。

ドーナッツにシュークリーム、プリンなどお菓子系も充実。いかにも中国の下町って雰囲気のお店に洋菓子が売ってるミスマッチが面白く、それがマカオの魅力でもある。

ここの名物は巻物みたいな形の「書生包」というパンなんだけど、今回は焼き上がりのタイミングに合わず残念。また次回のお楽しみにとっておきます。

茶餐廰


香港式大衆食堂のこと。ファミレスに例える人もいる。チェーンの店も多く、代表的なのは西灣安記、全球居、蔡冬記など。

メニューの幅が広いし家族連れからおひとり様まで気軽に利用できるので、迷ったら大体このタイプのお店で食べる。マカオは外食文化なので、現地の人たちもイートインやテイクアウトでよく利用してるようだった。

店内でご近所や知り合い同士が挨拶したり相席したりもよく見かけた。日本だと「外食」と「家食」の間にはハレとケのような境界線がある気がするけど、外食文化圏のマカオではそういう感覚はなく日常と一続きという感じを受ける。

ポークチョップバーガーとかマカオ名物も食べられるので、ついつい似たような物ばかり頼んでしまうんだけど、それもまたお店ごとの個性が出てて面白い。

メニューは膨大だけど、組み合わせで膨大になっているという感じで例えば「ハムと卵」をサンドで食べるかトーストで食べるか、「鶏肉」を麺で食べるかご飯で食べるか、という具合。

モーニングやランチの定食があるお店もある(「甘いセット(甜的)」「しょっぱいセット(鹹的)」という2パターン用意されているのもよく見かけた)ので利用しやすい。

茶餐廰のメニュー独特な用語もあるのでその一例を。

公仔麺 インスタント麺
多士・多 トースト
奄列 オムレツ
烏冬 うどん(wudongで日本語の音訳)
素うどんとかの「素(具なし)」。

最近は日本でも香港式の茶餐廰が増えてきたので、食べる機会は増えたと思う。

香港マカオ界隈における和製インスタントラーメンの進出っぷりはすごい。というか、完全に独自の進化を遂げている。

茶餐廰:南屏雅叙

老舗店の集まる通り「十月初五日」にある老舗の茶餐庁。ベーカリーも兼ねていて、店頭でパンも売っている。

レトロを絵にかいたようなお店なんだけども、店内は見事におじいちゃんばっかり!長年この辺りに暮らしてきた人たちが、何十年も変わらず利用しているんだろうなぁという歴史と愛情の積み重ねを感じてじんわりする。

だから逆に観光客らしき姿は少なく、地元の常連たちの憩い、もしくは日常生活の場という空気で若干アウェイ感がありつつも落ち着いて過ごせる。

そうそう、茶餐廰に入ると往々にして水の代わりに(※)うすーい紅茶が出てくるんだけど、ここの紅茶は薄くなかった、それが地味に感動だった。

頼んだのはミルクティーとポークチョップバーガー。冒険する勇気がなくて「いつものやつ」を頼んでしまったけど、ハムと卵のサンドイッチなど「南屏」の名を冠した特製のメニューもあったので、次に行く時は試してみたい。

※)健康にこだわる中国人は伝統的に冷たいものを飲食しないので、お店に入って「お冷や」が出てくることは基本的にない。

香港ミルクティー

ちなみに、香港・マカオのミルクティーは濃厚で非常においしい。
調べてみたら「ミルク」には牛乳ではなくエバミルクを使うのだそうだ。茶餐廰の卓上にはえてして豪快なガムシロップが置いてあるけど(「茶餐廰」冒頭の写真参照)、予め甘みがついていることもある。

業務スーパー行けばあるかな?作り方自体は簡単そうだったから、やってみたい。コーヒーとミルクティーブレンドした鴛鴦茶なんかもこれで作れるかも。
thewoksoflife.com

街角の軽食

咖喱魚旦

おひとり用の野菜補給に最適なので、これもマカオに行くとよく食べる。分かりやすく言えばカレーおでん

具を選んで煮てもらう、と言うスタイルはマーラータンに似ているけど、それのカレースープ&練り物多め版という感じ。店によってはスープのバリエーションを選ぶこともできる。かなり辛い場合もあるので、苦手な人はスープが選べるお店を探すのがいいと思う。

店頭には料金表が書いてあるが、だいたい野菜や大豆系が8P、肉や練り物が10P以上という感じ。しっかり食べようと思うと50P(1000円程度)にはなる。

初めて食べた2017年から5年以上経っても値段はあまり変わってなかった。セナド広場付近にもあるけど、ポークチョップバーガーと同様こういう観光地だと高くつくかもしれない。

お店はあちこちにあるが、カテドラル(大堂)周辺ではよく見かけた。

粉ものスイーツ(鶏蛋仔など)

マカオの何が楽しいって、街角の粉ものスイーツが充実していること!街角の軽食屋でも売っているし、夕方ごろになるとセナド広場周辺には屋台が出てくるので、探してみるのもいいと思う。

鶏蛋仔

これももとは香港のお菓子。ベビーカステラを連ねたような形をしており、専用の焼き器を使って作る。 ベビーカステラと違って中は空洞になっており、見た目よりも重くない。なので、クレープのようにアイスを巻いたりすることもある。

最近日本でもちらほら見かけるようになった。

ワッフル(夾餅)


マカオの街角ではよくワッフルを売っている(中国語では夾餅)。その名の通り、ピーナッツクリームや練乳を挟んだカロリー爆弾なので食べるにはちょっと勇気がいる。隣にあるのはバナナ風味のカステラで、これもマカオ特有の焼き菓子。例外なくおいしい。

金銭餅


素朴な手作りクッキーといった感じのお菓子(写真のパンケーキのように見えるやつ)。セナド広場周辺に屋台が出ていたので、2017年訪澳時は屋台で買って食べた。

卵黄たっぷりの生地を丸めて、伝統的な焼き器で潰して焼き上げる。まだらの焼き目は金銭餅の特徴で、町の菓子屋で買ったものも表面はこうだった。

手作りっぽい素朴な味わいが癖になるお菓子。マカオ銘菓の一つなので、観光客御用達の土産菓子店・鉅記餅家でも売っている(通販でも手に入る)。それだと1300円くらいだったか。町の菓子店で買ったのは1袋17P(340円弱)。アーモンドクッキーは30Pだったので比較的安い。駄菓子的な感じなんだと思う。

ちなみに澳門はエッグロール(蛋巻)をはじめとしてクッキー系が美味しい。個人的にはココナッツ風味の鳳凰巻(フェニックスロール)が好き。癖がなく美味しいし、お土産にも買いやすいのもありがたい。

御徒町で探してみたけど、クリーム入りとかドリアン風味とか、何故か変化球しかなくて。なぜ余計なことをする!

軽食屋:郭老爺小吃部

ホテルの近くにあったローカルな小吃屋さん。1月1日も開いていて、さらに夜遅くまで営業しているのでたびたびお世話になった。ここで夕食を買って帰って、ホテルの屋上テラスで夜景を見ながら食べるのが日課だったなぁ…

東アジア小吃のデパートみたいなお店で、酸辣粉、煎餅果子(※)、たこ焼き、チーズハットグ、大好きな鶏蛋仔やワッフルなどのお菓子系までとにかくメニューが豊富!鶏蛋仔は抹茶味とかあんこが入ったやつまであった。

ちなみに酸辣粉(麻辣春雨みたいな麺料理)は辛さが選べるんだけど、一番辛いのは「変態辣」。変態って。

ホテル・ロイヤルやホテル・ギアに泊まる方には使い勝手が良くておすすめ!

※せんべいではなく、薄い小麦粉生地でレタスやソーセージを巻いた軽食。