壺中天

歴史、旅行、ごはん、ゲームなどアジアなことを色々つづります。

【2018】中国シルクロード紀行8 完結編

前回:中国シルクロード7 阿房級厄日
初回:中国シルクロード1 中原から西域へ

帰国、最後の予想外

緊張のせいかよく眠れず、4時前に目が覚めた。カーテンを開けて窓の外を見た。深夜明けの南大街には意外と車が走っていて、タクシーもよく見かける。この分では、足がないと心配することもなかったのかと拍子抜けしたが、もう済んだことだ。

身支度をして、5時10分前にロビーに降りた。ロビーは薄暗くひっそりしていて、ソファーの上で昨日のお兄さんが寝そべっていた。声をかけると、チェックアウトの手続きをしたのち車に案内してくれた。もう来ていたのか。

車は城壁に開いたトンネルを潜り抜け、永寧門を背にして走る。城壁が遠ざかっていくのが名残惜しい。西安には数えきれないほどの見どころがあるのに、ほとんど見ずに終わってしまった。

道はすいていたので、40分くらいで空港に到着した。約束の160元を支払うと所持金もわずか、しかも食事をするにしてお空港値段で高いので、特にすることもなくチェックインする。ロビーには肉夾饃など西安名物のお店もあった。

さて、チェックインはしたものの、出国審査なしで搭乗口まで行けてしまった。何か変だな?と思っていたら上海乗り換えの便だったのだ。

確かに西安→東京の帰国便は所要時間7時間で、偏西風もあるのにそんなかかるか?とは疑問に思っていた。今回のチケットは旅行社の知り合いに手配してもらったんだけど、このことは聞いていなかった……。

いったん上海空港で飛行機を降り、すると新しい緑色のチケットが手渡される。乗り換え口が開放されるまで少し待ち、開いたら出国審査がある。ここは混んでいたし遅かった.。そのあと待合室まで移動したんだけど、色々余計につかれてしまった。

だから、その後のことはあまり覚えていない。早起きしたこともあって、機内では泥のように眠り、予定通りに成田に着いた。

総括

西安敦煌シルクロード広大な中国のなかでも、これらの地名は我々日本人にとって、何か特別な意味を持っているように思えてならない。

事実中国旅行歴の長い自分にあっても「その場にいるだけで感動」してしまうような場所は初めてだったように思う(中国ではないけど、他だとローマとイスタンブールくらいかなぁ)。

その感情の正体は何なのだろうか?

それは、文明の原点としてのこの地に対する敬意かもしれない。黄河文明、統一と文書行政によって統一世界・中国を作り出した秦、そして「漢字」「漢語」「唐人」と今でも中国人のアイデンティティの拠り所とされる漢・唐の栄光。

あるいは、我が国のルーツと関わるからかもしれない。日本も含めた東アジアの文明は、漢・唐帝国の影響のもとに育ち、漢字や古典作品など今でも多くのものを共有している。

もしくは、政治の表舞台を退いたゆえに、近代国家同士の確執や緊張と無縁であることも関係しているかもしれない。

だから我々日本人が西安敦煌に抱く印象といえば、憧憬を交えた美しく詩的なものである。いわば、日本人が中国に抱く「正の感情」の上澄み西安であり敦煌なのではないか。そんなふうに感じる。

しかし旅が終わってしまうと、江蘇浙江・安徽のように何度も足を運びたいと思うような愛着は生まれなかった。気候や景観の好みもあると思うけど、西安シルクロードの持つ「ロマン」的なイメージもその理由の1つではないかと思う。

ひねくれ者の自分は、多用される「ロマン」という言葉に空虚なもの、実態を伴わない独りよがりのようなものをも感じてしまうからだ。

だから「美しい」「素晴らしい」はたくさん見せて頂いたけど、「面白い」と感じるものには、今回の旅では出会えなかったような気がする。

素晴らしくいい料理を出すけど何度も行きたいとは思わない料理店とか、裕福で見目麗しくて稀有な体験をさせてくれるけど友達にはなれない人とか、自分にとってはそんな感じがあった。

それでもこの場所に、感動と憧憬を生み出す引力があるのは間違いない。時が経って、またその「ロマン」を味わいたくなった時がきたら、もう一度足を運ぶのだろうと思う。

各町雑感

西安


「あの長安にいる!」という感動が全てだったような印象。実際そこで見たものに関しては、自分の中ではあまりぱっとせず、写真を見返しても気に入っているものがあまりない。

一つの理由としては、例えば兵馬俑なんかはあまりにも有名で目にする機会も多いし、現地に行っても「確認作業」になってしまって、新鮮な驚きがないのかもしれない。

もう一つは……西安の売りと自分の好みが合致しなかったんじゃないかと思う。遺跡や陵墓にはあまり関心がないし、よく考えたら唐という時代にもそこまで関心があるわけではない。中国史好きにもいろいろあるからね…。

水郷古鎮の街並みや文人的文化、水墨画的風景、そういうのが私が中国に求めているものなのかもしれないなと感じた。だから、例外的に碑林周辺はすごくよかった。

わざとらしい演出にもあまり魅力を感じないので、見所は城門のショーに華清池のショーに大唐芙蓉園のショーって言われてもあまり惹かれず。ファンタジーでも阿房宮見たかったって言ってただろうって?建築は好き。つまり単なる好き嫌いの問題。

あとは世界的観光地なので張掖敦煌に比べてどこに行っても人が多く、それに暑さと湿気も加わって消耗が激しく、観光を楽しむ余裕がなかったと思う。オフシーズンに行けばまた落ち着いて楽しめるだろうか。

そう、8月の西安は気候的にかなりつらい。暑いだけでなく、とにかく湿気がものすごい。常にだらだら汗が流れてくるので、化粧しても意味ないから日焼け止めだけ塗っていた。真夏に行くのはあまりお勧めしない。

張掖


とにかく丹霞地質公園がすばらしい!自然の技が、いかに人の想像を超えたものであることか。ここに一目惚れして今回の旅を組んだけど、その期待をまったく裏切られなかった。個人的には黄山九寨溝にも引けを取らない感動があり、中国の自然遺産でもベスト5に入ると思う。

丹霞の岩山は朝日・夕日に照らされて赤みを増すと一層美しく見えるので、公園付近に宿をとるのもおすすめ。夜や早朝は満天の星を見ることもできる。今回泊まった靠山大営(Kaoshan tent)はBooking.comで予約できたし、その他にも現地に行けば小さなホテルが点々とあった。

朝か夕かという点については、朝をおすすめしたいと思う(特に夏は)。理由はいくつかあって、
①朝一で入れば人が少なく、バスに乗るにも待たずにすむ
②朝は気温があまり高くないので、快適に活動できる
など。
※夕暮れ時の丹霞がどんなものか知らないので、比較したうえでの意見ではないことについてご注意ください。

なお、張掖~西安便が1日何便あるか知らないけど、そう多くはないだろう。今回乗ったのは14:25西安発~16:30張掖着の便だったので、朝日を見るならそのまま直接丹霞に向かって、夕日を見るなら市内に宿を取って翌日午前に市内観光・午後に丹霞に移動→夕焼けを見てから出る、というスケジュールになるだろうか。

なお、空港~丹霞地質公園直通のバスはないのでタクシー移動になる。ツアーで来る人が多いためか夏の観光シーズンにも張掖空港にはタクシー1台しかいなかった。

詳しいことは丹霞の記事でも書いたけど、そこまであからさまに観光地化(商業化・俗化)してないのも個人的には居心地よかった。

張掖市内は点々と見所があるものの、無理に見に行くほどのものではないかなという印象。普通の街という感じ。炒炮はとても美味しかった。

敦煌


敦煌まで行くと全く気候が違って、日本ではもちろん北京上海西安とか中国のほかの町でも体験できないようなものが多くとても楽しめた。砂漠やオアシス、蜃気楼、何もない地平線等々、見るからに異境で旅人気分が味わえる。

見所も多いけど、これまで書いたように莫高窟には事前予約が必要でツアー参観、郊外の見どころもタクシーチャーターなりツアーなりでしか行けないので、鳴沙山や市内中心部を除いては自分のペースで回ることはできない。

ただ、莫高窟の場合は保護の関係上理解できるし、後者の場合は個人ツアーを手配してもらった結果自分の希望にある程度合わせてもらえたので、不満はなかった。

ちなみに今回申し込んだツアー代金は2020元。地球の歩き方に載っていた現地旅行社の、ヤルダン含む旅程での車チャーター代が1920元だったので、相場は大体2000元くらいのようだ(ヤルダンまで行く場合)。

安いツアーだとお店に連れていかれたり見学時間が十分に取れなかったりもあると思うので、何を一番大事にしたいかをあらかじめしっかり考えておくことが大事だと思う。

ちなみに、莫高窟の傷みは年々進んでいるので見に行くなら早めにと旅行社の知り合いに聞いている。見学の枠も縮小されてしまうかもしれない。

敦煌は乾燥しているので、8月はとにかく日差しがきつかった。それこそ水がお湯になるレベルで、暑いを通り越して痛い感じ。日傘か、それが邪魔だと感じる人はせめて帽子は必須。照り返しもきついのでサングラスもあったほうがいいかもしれない。

ただし、砂漠地帯なので太陽が顔を出さない間は気温がぐっと下がる。日陰は爽やかだし、夜や早朝に出歩くときは上着があったほうがいい。

敦煌山荘は本当にいいホテルだったのでおすすめです。ショップの品ぞろえも良くて、UV製品なんかもありましたよ(日本製のものまで)。

その他

寝台列車


日本でチケットも予約できるし(今回はTrip.comを利用)、予約もちゃんと通っていたので特に問題なく利用できた。

寝台は狭いけど、友人にフランスの寝台列車の写真を見せてもらった時にあまり変わらんな、と思ったので構造上の仕様だと思う。一番安い二等寝台だけど思ったより柔らかく寝心地は良かった。

荷物は、今回はリュックだったので寝台の上に乗せていたけどスーツケースは車両に荷物置き場があるのでみんなそこに置いていた。一般の利用者がそうしているので、盗難に神経質になる必要もないかと思う。パスポートやお金など貴重品だけ分けて手元に身に着けていれば十分な気が。

そもそも中国は全体的にセキュリティが厳しいから駅構内に入るのにも荷物検査や乗車券、身分証のチェックがある。そこまでして盗みを働くより、町で軽いぼったくりを働いたり隙間産業で稼いだ方が割が良いしそういう人が多い印象がある。

中国というだけで不穏な感じを覚えて身構える人もいるだろうけど、良くも悪くも厳しい国だし年々サービスが洗練されてきているので(それが寂しくもあるが)毎年行っている人間から見ると、イメージと実態に(いい意味での)ギャップがあると結構思っている。

お金関係

2018年春の上海ではキャッシュレスの洗礼を受けて大変だったが、あくまで2018年当時、西安~張掖~敦煌ラインで「現金払いは肩身が狭い」という雰囲気を感じたことはなかった。

まぁキャッシュレスが普及しているとはいえ現金で払うこと自体はできるので、あまり気にしすぎなくても大丈夫だと思う。

Wechat

支払いは現金で出来ても、アプリがないと使えないサービスというのはある。

たとえば国民的アプリとしてwechat(微信)が使用されている中国では、wechat経由で使えるサービスが多い。例えば、西安空港のフリーwi-fiはwechatアカウント経由で接続する仕組みだった。

なので連絡相手がいなくても、よく行く場合はアカウントを作っていると便利だと思う。今となっては常識レベルの話かもしれないけど。

次回は黄山安徽省の予定。時系列順に遡っていきます。その後はマレーシア、チベットかな。